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事業継承や多角的な事業戦略を実現する手段のひとつである「M&A」。
検討から最終契約までにかかる時間は半年〜1年程度といわれており、その期間中にやるべきことは多くあります。
そのため、M&Aに取り組む際は全体的な流れや各フェーズの内容を把握しておくことが大切です。
そこで今回は、M&Aの主な種類と基本的な流れをご紹介します。
各ステップについて細かく解説しますので、流れとその内容を正確に把握したい方はぜひ参考にしてみてください。
M&Aについては下記コラムで詳しく解説しています。
M&Aとは?その目的やメリット、スキームを解説
M&Aの種類には、主に「合併」「買収」「資本業務提携」「業務提携」の4つがあります。
自社に合った種類を選ぶためにも、それぞれの特徴やメリット・デメリットを押さえましょう。
合併とは、複数の企業をひとつの法人に統合する手法です。
「吸収合併」と「新設合併」の2つがあり、それぞれ以下のような仕組みになっています。
吸収合併 | 吸収される企業の全ての権利・義務を、吸収する企業が承継する |
新設合併 | 会社を新設し、その会社に吸収される企業の全ての権利・義務を継承する |
合併はグループ内の再編を目的に行われることが多く、その場合「生産性の向上やコスト削減を図れる」「シナジー効果が期待できる」などのメリットを得られます。
この他、競合他社で行うこともあり、その場合は「事業の発展やシェアの獲得」が期待できます。
ただし、合併は後述する他の種類に比べて手続きが煩雑です。
意思決定や指揮管理が複雑化することもあるため、計画的に進めるようにしましょう。
買収とは、企業や事業の経営権を買い取る手法です。
「株式譲渡」「株式交換」「株式移転」「事業譲渡」「第三者割当増資」などの種類があり、それぞれ以下のような仕組みになっています。
株式譲渡 | 売却企業が買収企業に株式を譲渡し、経営権を移転する |
株式交換 | 完全小会社になる企業の株式を、完全親会社になる企業に全て取得させる |
株式移転 | 1社もしくは複数の企業が合同で完全親会社を新設し、それぞれが保有する株式を全て完全親会社に移転する |
事業譲渡 | 売却企業の事業の一部を買収企業に譲渡する |
第三者割当増資 | 対象企業が特定の第三者に新株を割り当てることによって増資を行う |
このうち株式譲渡は、中小企業のM&Aにおいて最も多く採用されている手法です。
売却企業の経営権を買い取った買収企業は、「既存事業を強化できる」「市場において優位性を確保できる」などのメリットを得られます。
ただし、買収後に収益性が低くなってしまった場合は買収資金が無駄となり、多額の損失が生まれる可能性があります。
一方で売却企業は、「売却利益の獲得」「後継者不足の解消」などのメリットを得られます。
ただし、経営権が完全に消失するため、経営に携わることは難しくなるでしょう。
資本業務提携とは、業務提携に伴い、“対象企業に対して増資する”または“対象企業の一部の株式を譲渡する”ことによって、提携企業に対して議決権を与える手法です。
業務提携よりもさらに強固な関係性を構築することができます。
資本業務提携のメリットには、「経営資源を確保できる」「成長スピードを加速できる」などがあります。
ただし、強固な企業関係を築けるからこそ、一度構築した資本関係を解消することは困難です。
業務提携と比べて柔軟性に欠ける点は、デメリットといえるでしょう。
業務提携とは、企業が互いに経営資源を提供し共同で事業に着手することで、事業競争力の強化を図る手法です。
「技術提携」「生産提携」「販売提携」などの種類があり、それぞれ以下のような仕組みになっています。
技術提携 | 他社が持つ技術資源を、自社の技術開発や製造、販売などに活用する |
生産提携 | 他社に生産の一部や製造工程の一部を委託することで生産能力を補充する |
販売提携 | 他社が持つ販売資源(ブランドや販売チャネル、販売人材など)を活用する |
業務提携には「時間的・資金的なリスクを軽減できる」「多額の資金が不要」などのメリットがあります。
ただし、「自社の技術やノウハウが流出する可能性がある」などのデメリットもあるため、その点を踏まえて取り組むことが大切です。
M&Aにはさまざまな種類がありますが、その流れは基本的に同じです。
この章では、まずM&Aの大まかな流れをご紹介します。フェーズごとの具体的な内容は、次の章でご紹介します。
M&Aは、多角的な事業戦略を実現するための「手段」です。
目的ではないため、まずは「M&Aを行う必要があるか」をよく考えて、着手するか否かを検討します。
例えば買収企業は、成長戦略に関するビジョンや買収後の組織のあり方などを明確化した上でM&Aを検討するのがおすすめです。
一方で売却企業は、譲渡時期や譲渡後の従業員の待遇、商品・ブランドの引き継ぎ条件などを踏まえて検討すると良いでしょう。
M&Aを効率よく進めるには、財務や税務に関する専門的な知識が必要です。
そのため、一般的にM&A仲介業者と委託契約を結ぶことになります。
M&A仲介業者によって業務範囲や料金体系は異なるため、複数社を比較した上で選定すると良いでしょう。
M&A交渉相手を自社の力だけで探すのは困難なため、M&A仲介業者の力を借りるのが一般的です。
M&A交渉相手の選定方法は、買収企業と売却企業で異なります。
買収企業は、専門業者を通してノンネームシート(案件の概要書)を確認したり、独自で調査を行ったりして有望な買収対象を探すのが一般的です。
収集した情報をもとに交渉相手を絞り込みます。
売却企業は、ノンネームシートを作成し買主候補に提示することで交渉相手を探します。
なお、ノンネームシートには本社の住所や業種、事業規模、業績推移、M&Aを行う理由(売却理由)、売却希望価格、想定されるM&Aスキーム(M&Aの種類)などを記載します。
ノンネームシートに記載された情報や一般公開されている情報だけでは、さらなる交渉に進むことができません。
そこで、交渉相手と秘密保持契約を締結し内部情報を交換します。
秘密保持契約は買収企業と売却企業の間で直接交わすこともあれば、M&A仲介業者を介して間接的に交わすこともあります。
秘密保持契約を締結したら基礎情報を交換します。
基礎情報をまとめた資料のことを「インフォメーションメモランダム(IM)」といい、これには社名・会社概要をはじめ、事業内容や事業系統、取引先、財務データ、資産・設備の状況、雇用状況などを記載します。
IMの情報に基づき、買収企業が売却企業の価値を金銭的に評価します。
企業価値の算定方法は複数あり、売却企業の純資産価値に着目した「コストアプローチ」、株式市場やM&A市場における取引価額を基準とした「マーケットアプローチ」などがあります。
M&Aスキームはノンネームシートにも記しますが、これはまだ仮の状態です。IMの開示と企業価値の算定を経た段階で、本格的にM&Aスキームを選定します。
交渉開始からM&Aの基本合意までの間に、経営者同士の面談を行います。
M&Aでは、トップダウンの意思決定が必要になるシーンが数多くあります。
経営者同士互いの意思を確認しておけば交渉が円滑に進むため、トップ面談はなるべく早い段階で行うのがおすすめです。
買収企業と売却企業、双方がM&Aを進める意向を決めたら基本合意書を取り交わします。
基本合意書には、M&Aの取引内容やM&Aスキーム、譲渡対価、独占交渉権の付与、M&Aのスケジュールなどを記載します。
デューディリジェンス(DD)とは、売却企業の実態を把握するため、法務や財務、税務、ビジネスなどのさまざまな観点で売却企業が抱えているリスクや問題点を調査することです。
買収企業が自ら行うことは少なく、その分野の専門家に依頼するのが一般的です。
ここまでの交渉と基本合意締結、DDを踏まえて、最終条件交渉を行います。
買収企業はDDで把握したリスクや問題点をもとに、買収価格やM&Aスキームを見直し、リスクの軽減につながる補償の導入などを要求します。
売却企業は、承認すべきこと・譲歩すべきことを慎重に検討し、譲渡対価や従業員の処遇について再交渉するのが一般的です。
最終交渉がまとまったら、M&Aの契約内容を確定する最終契約を締結します。
最終契約書には、主に譲渡方法・価格や表明保証、誓約事項などを記載します。
クロージングとは、最終契約書の内容に基づき、経営権の移転と取得対価の支払いを完了させる手続きのことです。
法的手続きがメインとなるため、専門家のサポートを受けて行うのが一般的です。
クロージング後に行わなければならない手続きもあり、とくに事業譲渡の場合はその数が多くなります。
具体的には「財務諸表の確定・対価調整」「所有権・契約関係の移転」「許認可・届出」などの手続きが必要になります。
PMI(経営統合作業)とは、新経営体制の構築やITシステムの統合、経営ビジョンを実現するための計画策定などの一連の取り組みのことです。
M&Aによるリスクを最小化すること、そして成果を最大化することを目的としています。
M&Aに取り組む際は、まず「本当にM&Aを行うべきかどうか」を検討する必要があります。
明確な理由や目的がないまま着手すると、M&Aを思い通りに進められなくなる可能性があるため、このフェーズはとても重要です。
買収企業はM&Aを行うことで、売上規模の拡大や新規事業への参入、人材の確保、技術力や生産性の向上などを図れます。
ただし、その一方でM&A後の収益が予想を下回ったり、売却企業の優秀な人材が退職したり、組織がうまく立ちいかなかったりする可能性もあります。
そのため、買収企業がM&Aを検討する際はまず現状分析を行い、「買収後、どういう組織にしたいか」「成長戦略に関するビジョンをどう描きたいか」などを明確化することが大切です。
そうすることで、M&Aを成功させやすくなるでしょう。
売却企業は、「採算が合わない事業の切り離し」や「第三者への事業承継」などを目的としてM&Aを行うのが一般的です。
例えば、第三者への事業承継を検討している場合は、親族承継と比較してもなおM&Aを選択すべきかを考えてみると良いでしょう。
その上で、M&Aの目的や譲れない条件を洗い出すことで、思い通りのM&Aを実現しやすくなります。
あわせて、譲渡時期や譲渡後の従業員の待遇、商品・ブランドの引き継ぎ条件なども検討しておくと、より適切な判断を下しやすくなるでしょう。
M&Aの必要性を検討し着手することを決めたら、M&A仲介業者の選定を進めます。
以下は、M&A仲介業者の主な種類です。
FA(ファイナンシャル・アドバイザー)とは、資産運用や土地活用、金融関係など、財務全般に対して実践的なアドバイスを行うスペシャリストのことです。
M&Aにおいては、全体的な流れや各種作業に対して、サポートやアドバイスを行います。
検討段階からクロージングまで、全てのフェーズにおいて密に支援してもらえるため、初めてM&Aを行う場合は頼りになるでしょう。
なお、FAのサービスを展開する機関・会社には、投資銀行・証券会社や商業銀行、経営コンサルティング会社などがあります。
M&A仲介業者とは、買収企業と売却企業の間に入り、中立な立場でM&Aの成功に向けたアドバイスを行う専門業者のことです。
双方の利益を考慮し、条件の落とし所を探る役割を果たしてくれるため、友好的なM&Aを実現しやすいでしょう。
なお、日本の中堅・中小企業のM&Aでは、M&A仲介業者の力を借りて進めるケースが一般的です。
M&A仲介業者については下記コラムで詳しく解説しています。
M&A仲介会社は利用すべき?特徴・メリット・デメリット・選び方を押さえよう
M&Aマッチングプラットフォームとは、インターネット上のシステムを介して買収企業と売却企業をつなぐサービスです。
売却企業はシステムに企業案件を登録し、買収企業は企業案件を検索・閲覧し、マッチングしたら買収企業からオファーを送るという仕組みになっています。
M&Aマッチングプラットフォームを利用している企業は多いため、効率よくさまざまな業種の企業と出会うことが可能です。
M&A仲介業者と契約を結ぶ際は、手数料の形態を必ず確認しましょう。
M&A仲介業者の利用には、主に着手金やリテイナーフィー(定額顧問料)、成功報酬がかかります。
具体的な金額や発生する費用は仲介業者によって異なるため、M&Aにかかる費用をなるべく抑えるためにも複数社を比較するのがおすすめです。
M&A仲介業者の選定・契約が済んだら、M&A交渉相手の選定を進めます。
選定方法やポイントは買収企業と売却企業で異なり、具体的には以下のとおりです。
買収企業は、専門業者を通してノンネームシートを確認したり、独自で調査を行ったりして買収対象を選定するのが一般的です。
得た情報をもとに売却企業の魅力度と買収実現の可能性を分析します。
売却企業の魅力度 | 売却企業の事業分野・規模や業績などのデータをもとに、自社の戦略にマッチするか(有用性はあるか)、シナジー効果はあるか(どのような効果が期待できるか)などを評価する |
買収実現の可能性 | 想定される買収価格や株主構成(買収にどうの反応しそうか )などをもとに買収実現の可能性を探る |
売却企業は、ノンネームシートを作成し買主候補に提示することで交渉相手を探します。
ノンネームシートとは、企業名を伏せた案件の概要書です。
主に本社の住所や業種、事業規模、業績推移、M&Aを行う理由(売却理由)、売却希望価格、想定されるM&Aスキームなどを記載します。
企業名を伏せる理由は、「M&Aの実施を検討している」という自社の情報が社外に漏れてしまうことを避けるためです。
万が一情報が流出してしまうと事業に悪影響が及んだり、株価の上昇などによってM&Aの交渉が困難になったりする可能性があります。
こうした事態を防ぐため、企業名を伏せたノンネームシートで情報を提示するのです。
ノンネームシートは、一般的にFAをはじめとするM&A仲介業者が作成します。
M&Aマッチングプラットフォームを利用する場合は、ノンネームシートに記載する内容を売却企業自身でシステムに登録し、サービス側の審査・承認を経たのち、買収企業に公開されます。
M&A交渉相手の選定を終えたら秘密保持契約を締結し、基礎情報を開示します。
秘密保持契約とは、企業の機密情報を契約時に定めた用途以外で使うこと、そして他者に開示することを禁止する契約です。
M&Aに限らず新規取引や業務提携など、さまざまな場面で交わされます。
英語で「Non-Disclosure Agreement」と表記することから「NDA」とも呼ばれています。
M&Aにおいてさらなる交渉を進めるためには、ノンネームシートや一般公開された情報だけでは分からない、より具体的な情報まで把握する必要があります。
そのため、秘密保持契約を締結してお互いに内部情報を交換するのです。
なお、秘密保持契約は買収企業と売却企業の間で直接交わすこともあれば、M&A仲介業者を介して間接的に交わすこともあります。
続いて、売却企業が買収企業に対して基礎情報の開示を行います。
このとき売却企業が公開する資料は、主に「インフォメーションメモランダム(IM)」と「プロセスレター」の2つです。
IMとは、社名・会社概要をはじめ、事業内容や事業系統、取引先、財務データ、資産・設備の状況、雇用状況などをまとめた企業概要書のことです。
フォーマットは決まっていないため、情報をどこまで開示するかは売却企業が自由に決められます。
そのため、どの情報を(どこまでの情報を)開示すれば自社の魅力が伝わるかをよく考えて作成するのがポイントです。
一方で買収企業は、IMに売却企業にとって好都合な情報が込められている可能性を念頭に置き、専門業者にサポートしてもらいながら内容を精査します。
プロセスレターとは、複数の企業と同時に交渉を進めており、最終的なM&Aの相手を入札方式で決める場合において、売却企業が提示する資料のことです。
入札条件・方法や入札スケジュールを記載する必要がありますが、一般的には専門業者に作成を依頼します。
買収企業はプロセスレターの内容を確認した上で意向表明書(入札書)を作成・提出し、入札に参加します。
秘密保持契約の締結と基礎情報の開示の次は、企業価値の算定とM&Aスキームの選定に進みます。
企業価値の算定とは、すなわち買収企業が売却企業の価値を金銭的に評価することです。
算定方法は、主に「コストアプローチ」「インカムアプローチ」「マーケットアプローチ」の3つです。
コストアプローチ | 売却企業が持つ資産や負債などの純資産をもとに株式価値を評価する |
インカムアプローチ | 売却企業の収益力(利益やキャッシュフローなど)を、リスクを考慮して価値に換算することで企業価値を評価する |
マーケットアプローチ | M&A市場や株式市場における取引価額を基準として評価する |
このフェーズでは、企業価値を十分に算定する上で必要な情報が揃わないのが一般的です。
しかし、大まかにでも企業価値を算定しておけば本格的な交渉を進めるか否かを判断しやすくなります。
M&Aにおけるスキームとは、合併や買収、資本業務提携、業務提携などのM&Aの方法のことです。
M&Aスキームはノンネームシートにも記載しますが、この段階ではまだ仮の状態です。
IMの開示と企業価値の算定を経た段階で、想定買収対価や買収が実現する可能性、税制上の差異、M&A実行後のビジョン、M&Aによるリスクなどを総合的に考慮し、本格的にM&Aスキームを選定します。
スキーム次第で、M&Aによって得られる効果や税務面・会計面への影響は異なります。
そのため、M&Aを実施する目的や戦略に合うのはもちろん、最大限のメリットを得られるスキームを選択することが大切です。
ここまでのフェーズを経て本格的にM&Aを進めたい企業が見つかったら、トップ面談を行ったのち、基本合意締結を締結します。
トップ面談とは、候補先企業を2~3社に絞ったタイミングで、売却企業と買収企業、双方の経営者同士で行う面談のことです。
経営ビジョンを共有し合ったり、M&A後の運営方針や経営状況を確認したりするのが一般的で、お互いに理解を深める場となっています。
このとき、売却企業は自社にとって不利な情報もきちんと買収企業に伝えることが大切です。
仮にその後のフェーズで不利な情報が明らかになった場合、買収企業に不信感を持たれ、M&Aが失敗に終わる可能性があります。
そのため、誠意をもって話し合いを進めましょう。
トップ面談は早い段階で行うのがおすすめです。
M&Aではトップダウンの意思決定が必要になるシーンが数多くあるため、早めに互いの意思を確認しておけば、その後の交渉が円滑に進みやすくなります。
トップ面談とあわせて、買収企業が現地視察を行うこともあります。
このとき、売却企業は前もって従業員や技術者に「関係者が見学に訪れる」という旨を伝えておくことが大切です。そうすることで、従業員や技術者の混乱を避けられます。
この他、専門性が高い業種の場合は、経営者ではなく技術者が買収企業を案内したほうが滞りなく進むこともあるため、状況に応じて判断してください。
買収企業と売却企業、双方がM&Aを進める意向を決めたら基本合意書を取り交わします。
基本合意締結はあくまでもM&Aの仮契約であり、M&Aの成約を意味するものではありません。
しかし、基本合意締結を結んだ段階で互いに独占交渉権(買収企業が売却企業との交渉を一定期間独占する権利)が生じます。
そのため、互いに他社との交渉を進めることができなくなります。
なお、基本合意締結の際に取り交わす基本合意書には、M&Aの取引内容やM&Aスキーム、譲渡対価、独占交渉権の付与、M&Aのスケジュールなどを記載します。
トップ面談・基本合意締結が済んだら、デューディリジェンス(DD)を行います。
DDとは、買収企業による売却企業の監査のことです。
具体的には、法務や財務・税務、ビジネスなど、さまざまな観点で調査を実施し、売却企業が抱えているリスクや問題点を抽出します。
そんなDDには、主に「法務DD」「財務DD」「税務DD」「ビジネスDD」の4つがあります。
DDを買収企業が自ら行うことは少なく、法務DDは弁護士、財務DDは公認会計士、税務DDは税理士、ビジネスDDはビジネスコンサルタントに依頼するのが一般的です。
法務DDでは、売却企業の組織や株式、関係企業、資産・負債、人事・労務など、広い範囲において法務上の問題やリスクがないかを調査します。
例えば、株式に関しては株式発行の有効性や譲渡制限の有無、現在の正式な所有者などを確認します。
労務に関しては、労働法関連のコンプライアンスの他、未払い残業代や労使関係紛争の有無などを調査します。
万が一、売却企業に法務上の問題やリスクがあると、自社が風評被害を受ける可能性があるため、丁寧かつ慎重に調査してもらいましょう。
財務DDでは、売却企業の財務情報を調査します。
具体的には、貸借対照表や損益計算書、キャッシュ・フロー計算書をもとに、業績の推移や今後の収益性、リスクの有無などを確認します。
財務DDを実施することで、IMには記載されていない財務情報まで深く理解できるため、M&A実施後に困るリスクを最大限に軽減できるでしょう。
税務DDでは、売却企業の税務リスクを調査します。
具体的には、税務申告書をはじめとする税務資料をもとに、追徴課税の有無や繰越欠損金の発生状況などを確認します。
例えば、株式譲渡でM&Aを実行する場合は、買収企業が売却企業の財務リスクまで引き継ぐことになります。
仮にM&A後に申告漏れや納税処理が発覚した場合は、買収企業にペナルティが課されるため、万が一に備えて買収企業は細かく調査する必要があります。
ビジネスDDでは、売却企業の事業概要・計画や競合企業を調査します。
具体的には、外部環境や内部環境から市場における競争力を分析し、M&A後の競争優位性や収益性を確認します。
財務DDや税務DDとあわせて実施することで将来の収益力を予測でき、より精度の高い事業計画を策定しやすくなります。
次に、ここまでの交渉とDDを踏まえて最終条件交渉・最終契約を進めます。
最終条件交渉では、まず買収企業と売却企業、それぞれのM&Aの目的を再度確認します。
そして、お互いに譲れない条件を主張し、相手の事情や背景を踏まえた上で交渉を進めていきます。
最終条件交渉の際、買収企業はDDで発覚したリスクをもとに、買収価格やM&Aスキームを見直します。
その上で必要に応じて、リスクの軽減につながる施策や保証を要求します。
売却企業は、承認すべきこと・譲歩すべきことを慎重に検討し、譲渡対価や従業員の処遇について再交渉します。
M&Aにおける最終的な合意形成を行うため、専門家のサポートやアドバイスも受けながら慎重に話し合いを進めることが大切です。
最終条件交渉を経て、双方がM&Aに合意したら最終契約を締結します。
最終契約の名称はM&Aの種類によって異なり、例えば合併の場合は「合併契約」、株式譲渡の場合は「株式譲渡契約」です。
最終契約書には、これまでに行われた交渉で確定した合意事項を全て盛り込んでおり、仮にどちらか一方が最終契約違反を起こし相手に損害が生じた場合は、違反した側の企業に対し損害賠償を請求できます。
つまり、最終契約には法的な拘束力があるということです。
そのため、最終契約書の内容はよく確認し、納得した上で最終契約を締結することが大切です。
最終条件交渉・最終契約が済んだら、クロージングを進めます。
合併・会社分割・株式交換・株式移転の場合は、以下の対応が必要です。
1.M&Aの効力発生日までに、買収企業・売却企業の株主総会でM&Aに対する承認決議を得る 2.M&Aに反対する株主は、自らが所有する株式を公正な価格で買い取るよう企業に請求することができるため、その準備を進める 3.債権者の異議への対応(債権者保護手続き)を進める |
なお、会社分割の場合は「分割事業に主として従事していたのにもかかわらず、買収企業(新設企業)に労働契約が承継されない労働者」と「分割事業に主として従事していたわけではないのにもかかわらず、労働契約が承継される労働者」、それぞれに異議申立ての期間を設け、労働者の意向に沿って対応することも求められます。
事業譲渡の場合は、以下の対応が必要です。
1.M&Aの効力発生日までに、買収企業・売却企業の株主総会でM&Aに対する承認決議を得る 2.M&Aに反対する株主は、自らが所有する株式を公正な価格で買い取るよう企業に請求することができるため、その準備を進める 3.労働組合または労働者代表、そして承継予定労働者と、雇用契約の承継について事前に協議した上で、労働者から個別に同意を得る |
3を行う時期に決まりはありませんが、一般的にはクロージングの準備期間に行われます。
株式譲渡に関しては、会社法上必要になる対応はとくにありません。
株式の譲渡に伴い経営権が移転するため、売却企業は買収企業から対価の支払いを受けるでしょう。
売上高が一定水準を超える場合は、公正取引委員会に対しM&Aの届出を行わなければなりません。
独占禁止法によって「届出後30日間はM&Aを実行することができない」と定められており、この30日は公正取引委員会が独占禁止法違反に関する第1次審査を実施するための期間です。
もし第1次審査で独占禁止法違反の疑いが認められた場合は第2次審査が行われ、M&Aの実行日がさらに延びてしまいます。
クロージングまで終わったら、以下で解説する手続きを進めます。
事業譲渡の場合、売却企業の所有権や契約関係を買収企業に承継しなければなりません。
それに伴い、売掛金や買掛金、契約関係、不動産など、それぞれに合った手続きを行う必要があります。
売掛金 | 買収企業と売却企業との間で債権譲渡契約を結ぶ。債務者に対抗するためには、売却企業が確定日付のある証書で債務者に通知する、または譲渡に対する債務者の承認を得る必要がある |
買掛金 | 併存的債務引受または免責的債務引受で継承する |
契約関係 | 契約相手と個別に交渉して、契約を更改する |
不動産 | 事業譲渡契約により移転するため、所有権移転登記が必要 |
合併・会社分割の場合は所有権・契約関係が包括承継されるため、個別の対応は必要ありません。
ただし、登記と知的財産権登録の手続きは必要です。
株式譲渡・株式移転・株式交換では資産は移転しないことから、所有権・契約関係の移転に関する手続きはそもそもありません。
許認可・届出についても、M&Aの種類によって手続きの内容が変わります。
例えば、事業承継の場合は個別に新たな申請手続きを行う必要があります。
合併・会社分割の場合は自動的に承継される場合が多いですが、業種によっては監督官庁による承認が必要だったり、新たに申請しなければならなかったりすることもあるので注意しましょう。
クロージング後の手続きが済んだら、買収企業・売却企業、それぞれの各関係者にM&Aの情報を公開する「ディスクロージャー」を行います。
例えば、従業員に対して情報開示をする際は、動揺や混乱を最小限に抑えるためにもまずは幹部社員への開示を行い、計画的に一般従業員へ発表することが大切です。
また、ディスクロージャーを行うタイミングにも注意が必要です。
もしディスクロージャーのタイミングが遅れ、伝聞や報道でM&Aの事実を知ってしまった場合、従業員はひどく混乱してしまうでしょう。
経営者から直接M&Aについて説明するためにも、ディスクロージャーはなるべくM&A実施直後速やかに行うようにしましょう。
取引先企業に対して情報開示をする際は、挨拶状を送付してお知らせする、または買収企業・売却企業が揃って取引先企業を訪問するのが一般的です。
取引先企業と取引基本契約を締結している場合は、代表者変更や株主変更の事実を通知しなければならないため、取引先企業との契約書に記された通知方法や通知期限を確認し対応してください。
最後に、PMI(経営統合作業)を行います。
クロージング後から3か月~6か月ほどの間に、組織や定款(ていかん)、人事・労務、経理・財務、コスト・原価などの見直しを進めます。
買収企業と売却企業で組織体制や業務の進め方が異なるのは当然なので、どれを採用するか、それとも統合するか・改変するかは十分に検討する必要があります。
理想の組織ビジョンを明確にして慎重に進めましょう。
M&Aを行うにあたってやるべきことは複数あり、最終契約までにかかる期間は半年〜1年程度といわれています。
この長丁場の中、M&Aを円滑に進め成功させるためには、「いつどのタイミングで何をやるか」を正確に把握する必要があります。
今回ご紹介したのはM&Aの基本的な流れです。
どのような業界・業種であってもこの流れから大きく逸れることはないため、M&Aを検討している企業はぜひ参考にして準備を整えてみてください。
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