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資金調達方法として個人・法人ともに利用されている「リースバック」。
マイホームやオフィスなどを売却後、家賃を支払ってそのまま利用し続けることができますが、万が一家賃を支払えないとどうなるのでしょうか。
今回は、法人が利用できるリースバックの資産対象や一般的な契約の流れ、家賃が支払えない場合の対応についてご紹介します。
また、契約時の注意点やリースバック以外の資金調達方法、法人がリースバックの利用を検討する場面についてもまとめています。
資金調達をしたい方は、ぜひご参考にしてください。
[cta]リースバックとは「セールスアンド リースバック」の略で、所有している資産を売却した後、その資産を新しい所有者から借りて引き続き使用する形態の契約です。
最終的に買い戻しも可能なため、資産の売却とは異なります。
リースバックは個人でも利用されていますが、もともとは法人向けのサービスです。
リースバックが誕生したのは1930年代といわれています。
アメリカが発祥で、1940年代にはチェーンストアの不動産を取得する方法として活用されていました。
次第に一般企業でも取引されるようになり、日本で利用されるようになったのは1990年代のバブル崩壊後とされています。
バブル崩壊によって株価や地価が下落し、企業の資金調達方法として法人向けリースバックが利用されるようになったのです。
法人の場合、経営状態が良くなるとまとまった資金が入るため売却した資産を買い戻すことができます。
これにより、リースバックのメリットを享受することが可能です。
一方で個人の場合、後からまとまった資金が入るケースが少なく、買い戻せないことがほとんどです。
そのため、個人は「セールス」と「リース」で留まっている方が珍しくありません。
法人がリースバックできるものに以下が挙げられます。
・オフィス ・店舗 ・工場 ・倉庫 ・社員寮 ・自宅兼事務所 ・土地 ・パソコン ・機械設備 ・オフィスの家具・家電 ・社用車 ・医療用機器 |
なお、リースバックを提供する会社によって取り扱い対象が異なるため、利用前に確認が必要です。
リースバックについては下記コラムで詳しく解説しています。
リースバックとは?メリットやデメリット、リスクはある?契約時にみるべきポイントも解説
具体的なプロセスはリースバックを提供する会社や資産の種類によって異なる場合がありますが、一般的な流れは次のステップで進められます。
1.リースバックを提供する会社に初期相談を行います。 ここではリースバックの目的や条件、対象資産についての確認が行われます。 2.資産を査定してもらいます。 3.審査結果が提示され、内容に問題がなければ契約へと進みます。 |
契約を結ぶ前に、必要に応じて交渉を行います。
条件が合意に達するまで詳細な調整が行われるため、契約までに時間がかかることを念頭に置いてリースバックを利用しましょう。
リースバックを利用して自社のオフィスや店舗などを売却した場合は、家賃を支払い続けなければいけません。
では、万が一家賃を支払えないとどうなるのでしょうか。
リースバックを利用して家賃を支払えなくなった場合、すぐに契約を解除され、退去を求められるわけではありません。
借地借家法(しゃくちしゃっかほう)という法律によって借主の権利が守られるからです。
リースバックの契約が解除される目安は3か月といわれています。
ただし、これはあくまで目安です。
リースバックを提供する会社との契約で2か月と定めている場合は、家賃を支払えない状態が2か月続くと契約が解除されることもあります。
リースバックの契約解除までの流れは以下のようになっています。
リースバック契約を提供する会社から家賃の滞納についての通知が届きます。
通常は支払期限を過ぎると督促が行われ、延滞利息が発生することもあります。
督促状が届いたら、リースバック契約を提供する会社に相談するようにしましょう。
翌月にまとめて支払うことができる場合は、その旨を伝えておくことで督促をストップしてもらえる可能性があります。
督促状が届いて無視すると次のステップに移行してしまうので連絡し、事情を説明することが大切です。
リースバック契約を提供する会社に連絡をせず、家賃も支払えない場合は保証人に督促状が届きます。
保証人は契約者が支払うべき家賃を代わりに支払う責任を負います。
リースバック契約を提供する会社に家賃を支払うことができない場合は、内容証明郵便による通知が届きます。
内容証明郵便は、差出人・宛先・内容・差出日時を証明できる郵便です。
通常の郵便の場合、「届いていないからわからなかった」ということがありますが、内容証明郵便はそのような事態を防げるため、契約や法律に基づく通知を送付する際に利用されます。
内容証明郵便を送るということは、解約する、または法的手段に訴える前段階であることを意味します。
そのため、内容証明郵便が届いた時点ですぐに支払うことができれば、まだオフィスや店舗などを利用できる可能性があります。
内容証明郵便が届いても家賃を支払うことができない状態が3か月続くと、リースバックの契約が解除されます。
契約が解除されるとそれ以上は利用することができないため、速やかに退去しなければいけません。
指定された期日までに退去しなかった場合は、明け渡しによる民事訴訟へと発展し、強制退去となる可能性があります。
訴訟を起こされる前に、速やかに退去しましょう。
リースバックを契約する際は、以下の点に注意が必要です。
リースバックを利用してオフィスや店舗などの物件を売却した場合、その価格は周辺相場よりも安くなる可能性があります。
なぜなら、リースバック契約を提供する会社は不動産相場の価格変動や借主の家賃滞納のリスクを考慮しなければならないからです。
周辺相場よりも安く買い取ることで、そのリスクを低減しているのです。
資金調達のためにリースバックを利用する場合は、売却価格が安くなりすぎないよう価格を交渉する必要があります。
リースバックを利用する場合、家賃が周辺相場より高くなる可能性があります。
これは、リースバックの家賃は周辺相場ではなく不動産売却価格によって決まるからです。
家賃相場は6%〜13%ほどとされており、高額で売却できるとその分家賃の金額も高くなります。
とはいえ、売却価格は周辺相場より安くなる可能性があるので、家賃も安くなることもあります。
リースバックでは、買い戻し時の費用が高くなる可能性があります。
買い戻し時の価格は、売却時の価格に10%〜30%程度上乗せされた金額で設定されることがあります。
そのため、売却時には低い価格で売却し、買い戻し時はそれよりも高い価格を支払うことになります。
リースバック契約を提供する会社によっては、市場価格の上昇を考慮した価格が設定される場合と買戻価格が固定されている場合があります。
買い戻し時の費用が跳ね上がるのを防ぎたい場合は、買戻価格が固定されている会社を選ぶのがおすすめです。
リースバックの再購入時の相場については下記コラムで詳しく解説しています。
【法人向け】リースバックの売却・リース・再購入時の相場や利用メリット
リースバックを利用する場合、改修には契約会社の許可が必要となります。
なぜなら、不動産の所有権は契約した会社になるからです。
そのため改修を行いたい場合は、契約会社に許可を得るようにしましょう。
資金調達の手段は、リースバック以外にもあります。
リースバックを利用する前に、他の資金調達手段も検討しましょう。
デットファイナンスとは、借り入れを通じて資金を得る手段を指します。
これは、返済義務を伴う負債としての資金調達であり、具体的には銀行や自治体からの融資、社債の発行、ローンの利用などが挙げられます。
デットファイナンスを利用することで、節税効果が期待できます。
なぜなら、借入金の利息は税務上の経費として認められ、課税所得を減少させることができるからです。
これにより、実質的な資金調達コストが低下することがあります。
このほか、デットファイナンスを利用する場合、短期間で大規模な資金調達が可能です。
ただし、デットファイナンスにはメリットがある一方でデメリットもあります。
それは、利息負担が企業の収益を圧迫することです。
借入金には利息が付くため、金利が高いと返済額も大きくなります。
くわえて、デッドファイナンスを利用すると自己資本比率が下がり、信用に影響を与えることもあります。
デットファイナンスは企業の成長や運転資金の確保において重要な資金調達手段のひとつですが、利用する際は慎重な返済計画とリスク管理が必要です。
エクイティファイナンスとは、株式を発行して投資家から資金を得る手段を指します。
調達した資金に対する返済義務はありませんが、企業の利益から株主に配当金を支払わなければいけません。
エクイティファイナンスを利用するメリットとしては、キャッシュフローの安定性の向上が挙げられます。
借入金のように定期的な返済が不要なので、資金ショートの予防にもつながります。
また、企業の業績が悪化しても返済義務がないことにより倒産リスクを低減できます。
エクイティファイナンスを利用するデメリットには、配当金の支払いが挙げられます。
企業が利益を上げた場合は株主に対して配当を支払う義務があるため、出費が発生します。
このほか、新たに株式を発行することで既存の株主の持ち分比率が低下することもデメリットです。
これにより、経営支配権が希薄化し、意思決定が複雑になることがあります。
エクイティファイナンスを利用する際は、長期的な成長戦略に基づくことが重要です。
アセットファイナンスとは、企業が特定の資産を売却、または担保にして資金を調達する方法を指します。
具体的には、リースバックやファクタリング、M&A、手形割引などがアセットファイナンスに含まれます。
手法によって担保とする資産は異なりますが、主に不動産や設備、車両、機械、在庫、売掛金などが挙げられます。
アセットファイナンスを利用するメリットは、スピーディーに資金を調達できることです。
資産を担保にすることで、貸し手の未回収リスクが軽減されます。
これにより、審査が簡素化されスムーズに資金調達を行えることがあります。
アセットファイナンスのデメリットには、資産の喪失リスクが挙げられます。
万が一返済が滞ってしまうと、貸し手に担保が取り上げられてしまいます。
そうなった場合、企業の大切な資産が失われます。
アセットファイナンスを利用する際は適切な資産を選び、慎重に計画を立てることが重要です。
法人がリースバックの利用を検討するシーンには主に以下が挙げられます。
リモートワークの導入により、オフィスの利用頻度が少なくなった法人はリースバックの利用が向いています。
オフィスを利用する頻度が少なくなったとはいえ、すぐに手放すと困る法人は少なくありません。
そのような場合、リースバックを利用すればまとまった資金が手に入る上、維持費を減らしたうえでオフィスを継続して利用できます。
オフィスがなくても困らない体制が整えば、契約満了時にそのまま手放すことが可能です。
反対に、今後もオフィスを利用したい場合は買い戻すこともできます。
融資など他の資金調達が難しい法人もリースバックが適しています。
税金を滞納したことがある、借入金が多いなど信用力に課題がある法人は、金融機関から融資を受けるのが難しい場合があります。
その点、リースバックは担保資産があるため、信用リスクが軽減され、資金調達が容易になります。
大規模な設備やインフラを必要とする法人は、事業所の移転が難しい傾向にあります。
なかには、従業員の通勤問題で事務所の移転が難しい法人もあるでしょう。
事業を継続しつつ、まとまった資金を調達したい法人はリースバックの利用が適しています。
リースバックを利用すれば事務所を継続して利用できるので、移転によるコストと時間を抑えることができます。
また、従業員も通勤時間が変わらないので満足度が下がる心配もありません。
事務所を移転すると取引先に「経営が危ういのではないか」と思われ、最悪の場合取引を断れてしまうケースもありますが、リースバックを利用すればそのようなリスクも低減できます。
リースバックは資産の売却により、まとまった資金を調達することが可能です。
売却によって得た資金の使い道は決まっていないため、設備の購入や新規事業の設立など、必要な用途に充てることができます。
経営状態の悪化や税金の滞納などによって金融機関から融資を受けられない場合は、リースバックを検討してみると良いでしょう。
キャッシュフローを改善したい場合もリースバックの利用が有効です。
売却によって得た資金を運転資金として活用することで、日常の業務運営や短期的な財務ニーズに対応することができます。
もし債務がある場合は、売却資金を使用して返済することも可能です。
これにより、利息の支払い負担を軽減しキャッシュフローの安定化が図れます。
リースバックの利用シーンについては下記コラムで詳しく解説しています。
セール・アンド・リースバックは検討するべき?メリット・注意点・会計処理を解説
法人向けのリースバックでは、オフィスや店舗、工場、社員寮、土地などを売却して資金を調達することができます。
また、リース料を支払って引き続き利用できるため、オフィスや店舗などを移転させる必要はありません。
これにより、取引先との関係に支障をきたすこともないのです。
さらに、リースバックでは資産を買い戻すことも可能です。
ただし、リースバックは通常の売却と異なり、売却価格が安くなったり賃料が周辺相場よりも高くなったりすることがあります。
家賃を支払えないと退去を求められ、買い戻しができなくなってしまうので、その点も踏まえリースバックの利用が適しているかどうかを判断することが大切です。
資金調達が必要な場合は、他の方法も比較・検討することをおすすめします。
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