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財務キャッシュフローとは?増減に関わる要素・プラスマイナスの分析

公開日
2024.08.28
更新日
2024.08.30
財務キャッシュフローとは?増減に関わる要素・プラスマイナスの分析

企業経営において、キャッシュフローを把握することは極めて重要です。

なぜなら、企業の現金の流れを正確に把握することで、資金繰りの管理を効果的に行うことができるからです。

また、金融機関に対しても、安定した現金フローを示すことで信頼性を高め、資金調達を円滑に進めることができます。

今回は、キャッシュフローの重要性やキャッシュフロー計算書における3つの項目、財務キャッシュフローを構成する要素、注意したいケースなどをご紹介します。

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財務キャッシュフローの概要

資料を使い話をする男女

財務キャッシュフローについて知る前に、まずはキャッシュフローについて詳しく知っておきましょう。

キャッシュフローは企業が有する現金の流れ

キャッシュフローとは、企業が有する現金の流れのことです。

具体的には、一定期間内にどれだけの現金が入ってきて(キャッシュイン)、どれだけの現金が出ていったか(キャッシュアウト)を把握するための指標です。

なぜキャッシュフローを知ることが重要なのか

キャッシュフローは、企業の健全性や資金繰りを把握するために重要です。

企業の財務状況を把握できる「貸借対照表」や、利益を把握できる「損益計算書」では、現金の流れを完全に把握することはできません。

そのため、利益が出ているにもかかわらず手元に現金がないという状況も起こり得ます。

資金が不足すると取引先への支払いが滞り、従業員に給与を支払えなくなってしまいます。

その結果、黒字倒産に陥ってしまう可能性があるのです。

キャッシュフローを把握しておけば、企業の持続的な成長と安定した経営が実現しやすくなります。

キャッシュフロー計算書における3つの項目

企業が有する現金の増減を表した書類が、キャッシュフロー計算書です。

この書類では、キャッシュフローが「営業活動」「投資活動」「財務活動」の3つの種類に分けられます。

営業活動によるキャッシュフロー

営業活動によるキャッシュフローは、企業の本業での活動から得られる現金の流れを指します。

具体的には以下が挙げられます。

【収入】

・売上収入
・前受金などの営業収入                 

【支出】

・原材料の購入費用や製造コスト
・人件費
・広告費やマーケティング費用などの営業費用         
・事務所の賃料や公共料金などの一般管理費用
・顧客への返金や割引などの営業支出

キャッシュフロー計算書において、営業活動によるキャッシュフローがマイナスの場合は、売掛金の回収が滞納していることや、本業がうまく展開できていないなどの問題が考えられます。

営業活動によるキャッシュフローがマイナスの場合、事業資金の枯渇につながるため、早めに営業活動の見直しをする必要があります。

投資活動によるキャッシュフロー

投資活動によるキャッシュフローは、企業の成長・発展を目的とした投資活動から生じる現金の流れを指します。

具体的には以下が挙げられます。

【収入】

・設備や不動産などの有形固定資産の売却
・企業が保有している株式や債券などの売却      
・投資からの収益

【支出】

・機械設備やコンピュータシステムなどの購入        
・土地や建物、車両などの購入
・特許権や商標権などの無形資産の購入
・他企業の株式や債券などの購入
・投資用不動産の購入

投資活動によるキャッシュフローがマイナスでも、経営がうまくいっていないというわけではありません。

将来に向けて積極的に投資活動を行っていることを意味するため、投資活動によるキャッシュフローのプラス・マイナスでは経営の良し悪しを判断することはできないのです。

ただし、投資活動によるキャッシュフローのマイナスが大きい場合は、資金不足に陥る可能性があります。

キャッシュフローの流れを把握した上で、投資を行うことが大切です。

企業が営業活動と投資活動の結果として生み出した現金のうち、事業運営や成長に必要な支出を行った後に残る自由に使える現金のことをフリーキャッシュフローといいます。

フリーキャッシュフローがプラスな状態であれば、企業の財務状況が健全であることを意味します。

投資キャッシュフローについては下記コラムで詳しく解説しています。
投資キャッシュフローとは?要素・分析・改善ポイントをご紹介

財務活動によるキャッシュフロー

財務活動によるキャッシュフローは、企業の資金調達と返済に関連する現金の流れを指します。

具体的には以下が挙げられます。

【収入】

・金融機関からの借り入れによる資金調達       
・株式の発行や売却による資金調達

【支出】

・借入金の返済
・配当金の支払い
・自社の株式を買い戻すための支出         

財務活動によるキャッシュフローがマイナスの場合、借入金の返済などが進んでいる状態を意味するため、業績が悪化しているというわけではありません。

一方で、財務活動によるキャッシュフローがプラスの場合は、事業拡大のために資金調達を行っていると考えられます。

上記の理由により、財務活動によるキャッシュフローもプラス・マイナスでは経営の良し悪しを判断することはできないのです。

ただし、資金繰りの悪化によって資金調達を行い、過剰な借入金がある場合は財務リスクが高まる可能性があります。

財務キャッシュフローを構成する要素

電卓を使い作業をする女性

財務キャッシュフローを構成する要素は主に以下の5つです。

・借り入れによる収入・返済
・社債の発行
・新株式の発行
・自己株式
・配当金

それぞれご紹介します。

借り入れによる収入・返済

金融機関から借り入れを行った場合、手元の現金が増えるので財務活動によるキャッシュフローはプラスになります。

一方で、返済を行った場合は手元の現金が減るので財務活動によるキャッシュフローはマイナスとなります。

借り入れによる収入・返済を比較すると、借入金が増加傾向にあるのか、借入金の返済期なのかを把握することが可能です。

社債の発行

社債とは、企業が資金調達のために発行する債券のことです。

投資家に社債を購入してもらい、企業はその資金に対して一定期間ごとに利息を支払います。

満期日になると、企業が投資家に元本を返済します。

社債を発行した場合、財務活動によるキャッシュフローはプラスになります。

満期日に返済を行った場合、財務活動によるキャッシュフローはマイナスになります。

新株式の発行

新株式は、主に企業が資金調達を行う際に発行します。

資本金を増加させることで、財務活動によるキャッシュフローはプラスになります。

なお、新株式発行によって得た資金は企業の自己資本に組み込まれるため返済の義務は生じません。

自己株式

自己株式とは、自社で保有する株式のことを指します。

自己株式を売却した場合、収入を得ることになるため財務活動によるキャッシュフローはプラスになります。

一方で、自己株式を株主に対価を支払って取得する場合、財務活動によるキャッシュフローはマイナスになります。

配当金

配当金とは、株主に分配される現金配当を指します。

株主に対して配当金を支払う場合、手元の現金が減ります。

そのため、財務活動によるキャッシュフローはマイナスになります。

財務キャッシュフローのプラス・マイナス

「+」「-」のブロック

ここでは、財務キャッシュフローはプラスとマイナスどちらが良いのか、プラスの場合・マイナスの場合のチェックポイント、財務キャッシュフローに問題があるケースをご紹介します。

財務キャッシュフローはプラスとマイナスどちらが良い?

財務キャッシュフローは、プラスとマイナスどちらが良いかは企業の状況によって異なります。

金融機関からの借り入れを行っている場合や社債を発行した場合は資金調達をしているので、財務キャッシュフローはプラスになります。

しかし、これらは返済が必要になるため、将来的に財務キャッシュフローはマイナスになる可能性があります。

また、財務キャッシュフローがマイナスだからといって経営状況が悪いわけではなく、借入金の返済を行っている場合は負債が減少し、財務健全性が向上します。

これらの理由により、財務キャッシュフローはプラスとマイナスどちらが良いかは一概にはいえないのです。

プラスの場合のチェックポイント

財務キャッシュフローがプラスの場合、資金調達の目的や方法などを確認する必要があります。

なぜなら、事業拡大のために資金調達を行っている場合と、資金繰りが厳しいという理由で資金調達を行っている場合では判断や影響が異なるからです。

財務キャッシュフローと営業キャッシュフローがプラスで、投資キャッシュフローがマイナスの場合は、事業拡大のために資金調達を行っていると判断できます。

そのため、借入金が多い場合でも経営状態を気にする必要はないといえます。

一方、財務キャッシュフローと投資キャッシュフローがプラスで、営業キャッシュフローがマイナスの場合は、資金繰りが厳しいための資金調達を行っている可能性があります。

資金調達が続くと、長期的に企業の財務健全性に悪影響を与える可能性が考えられます。

このように、財務キャッシュフローがプラスであっても営業キャッシュフローと投資キャッシュフローとのバランスをチェックしておくことが大切です。

マイナスの場合のチェックポイント

財務キャッシュフローがマイナスの場合は、その原因を確認する必要があります。

営業キャッシュフローがプラスで新たに資金調達を行っていない場合、借入金の返済が滞りなく進んでいることを意味するため、経営状態を気にする必要はないといえます。

しかし、営業キャッシュフローもマイナスの場合は、希望通りの融資を受けられていないかもしれません。

このような状態だと資金が足りなくなり、倒産する可能性があります。

そのため、資金調達方法を考えるなどの対策を講じることが大切です。

事業資金の調達方法は下記のコラムで詳しく解説しています。
事業資金どう集める?18の資金調達方法を解説

注意したい「問題あり」のケース

注意したいケースは以下の2つです。

フリーキャッシュフローがマイナスなのに財務キャッシュフローもマイナス

フリーキャッシュフローがマイナスの場合、自由に使える現金が手元にないことを意味します。

そのため資金調達を行う必要がありますが、財務キャッシュフローもマイナスの場合、金融機関から融資を断られている状況だと考えられます。

借入先が見つからなかったり、金利が高い借入先を利用したりすると、資金繰りが悪化する可能性があります。

営業キャッシュフローがマイナスで投資・財務キャッシュフローはプラス

営業キャッシュフローがマイナスで、投資・財務キャッシュフローはプラスの場合、本業での活動で利益が出ておらず、資金繰りが厳しいという理由で資金調達を行っていると判断されてしまいかねません。

これにより、金融機関からの融資を受けたい場合に断られてしまうことが考えられます。

投資・財務キャッシュフローがプラスの場合は、営業キャッシュフローもプラスになるよう経営改善が必要です。

キャッシュフロー計算書は作成したほうが良い?

タブレットを使い作業をする女性

キャッシュフロー計算書とは、自社の収入と支出を把握するための財務諸表のひとつです。

ここでは、キャッシュフロー計算書を作成する目的や重要な指標、直接法と間接法についてご紹介します。

キャッシュフロー計算書を作成する目的

キャッシュフロー計算書を作成する目的は、主に以下の2つです。

黒字倒産を防止するため

黒字倒産とは、利益があり会計上は黒字になっているものの、資金が不足して支払いができなくなり倒産してしまうことです。

キャッシュフロー計算書を作成していれば、企業の現金の流れを詳細に把握し、財務状況を適切に管理することができます。

これにより、手元に資金がなくても、計画的に設備投資を行って黒字倒産をする状況を防ぐことが可能です。

融資を受けやすくするため

キャッシュフロー計算書は、企業の現金の流れを詳細に示し、収益性や健全な資金運用を証明する書類です。

そのため、金融機関が融資を行う際、企業が安定して現金を生み出し、適切に運用できているかを評価するためにキャッシュフロー計算書を重視します。

結果として、健全な経営状態を示すキャッシュフロー計算書があることで企業の信用力が向上し、融資を受けやすくなるのです。

わかりやすい指標となる「キャッシュ・コンバージョン・サイクル」

キャッシュ・コンバージョン・サイクルとは、企業が仕入債務を支払ってから現金に変換するまでの期間を示す指標です。

具体的には、在庫回転日数、売上債権回転日数、買入債務回転日数の3つの要素で構成され、企業の資金効率を評価するために用いられます。

キャッシュ・コンバージョン・サイクルを求める計算式は以下のようになります。

棚卸資産回転期間 + 売上債権回転期間 - 仕入債務回転期間

続いて、具体例をご紹介します。

・仕入債務回転日数:商品を仕入れてから30日後に代金を支払った
・棚卸資産回転日数:仕入れた商品を仕入後40日目に販売した
・売上債権回転日数:商品の代金が販売後50日目に支払われた

上記の場合の計算式は以下のようになります。

40日 + 50日 - 30日 = 60日            

仕入れの代金を支払い、商品の代金が入金されるまでに60日かかることがわかります。

キャッシュ・コンバージョン・サイクルが短いほど、資金が効率的に運用されていることを示します。

直接法と間接法の違い

キャッシュフロー計算書には「営業活動によるキャッシュフロー」「投資活動によるキャッシュフロー」「財務活動によるキャッシュフロー」があり、このうち営業活動によるキャッシュフローは直接法と間接法の2種類で表すことができます。

直接法は、取引ごとに収入・支出を個別に記載する方法です。

現金の流れを明確にし、現金管理の実態を直接把握しやすくする利点があります。

一方で、間接法は損益計算書の「税引前当期純利益」から「調整項目」を加減算して記載する方法です。

利益と現金フローの違いを明確にし、企業の収益性とキャッシュフローの関係を把握するのに役立ちます。

なお、直接法と間接法で記載方法は異なりますが、最終的な金額は同じになります。

直接法の作り方

直接法のキャッシュフロー計算書の作り方は以下のようになります。

1.現金収入を計上する(売上収入・受取利息および配当金・その他の営業活動からの現金収入)
2.現金支出を計上する(仕入代金の支払い・支払給与・支払利息・税金の支払い・その他の営業活動に伴う現金支出)
3.現金収入と現金支出を合計する
4.その他の営業費の支出を集計する(地代家賃、通信費、水道光熱費等)

間接法の作り方

間接法のキャッシュフロー計算書の作り方は以下のようになります。

1.損益計算書から純利益を取得する
2.純利益に含まれる非現金項目(例:減価償却費、引当金の増減)を調整する
3. 営業外損益と特別損益を調整する
4.投資活動や財務活動に関連する現金収支を除外し、営業活動に関連する現金収支のみを反映させる

キャッシュフロー計算書の作り方については下記コラムで詳しく解説しています。
中小・個人も要注目!キャッシュフロー計算書の基本的な作り方

間接法での計算方法については下記コラムで詳しく解説しています。
キャッシュフロー計算書の重要性・計算の方法【間接法】

まとめ

財務活動によるキャッシュフローは、企業がどれだけの資金調達を行い、どのように返済しているかを示します。

企業の財務戦略が健全であるかどうかを評価するための指標となるため、財務キャッシュフローを把握しておくことは大切です。

ただし、財務キャッシュフローだけでは経営の良し悪しを判断することはできません。

営業キャッシュフローや投資キャッシュフロー、フリーキャッシュフローなども見ながら経営状態を判断する必要があります。

フリーキャッシュフローと財務キャッシュフローがマイナスの場合、もしくは営業キャッシュフローがマイナスで投資・財務キャッシュフローがプラスの場合は、金融機関からの融資を受けたい場合に断られてしまう可能性が考えられます。

この場合、資金調達方法として「ファクタリング」を利用するのも一案です。

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財務キャッシュフローとは?増減に関わる要素・プラスマイナスの分析

【監修】日本中小企業金融サポート機構 編集局長

保有資格:FP2級

大学卒業後、地方銀行に勤務。主に企業向け融資を担当。その後、損害保険会社にて法人営業、外資系金融機関にて法人融資や人材育成を担当するなど、一貫して金融関連業務に従事。2019年一般社団法人日本中小企業金融サポート機構に入社し、これまでの金融の知識と法人営業の経験を活かし、多くの中小企業・零細企業をサポート。
プライベートでは3児の父の顔も持ち、犬・猫・亀も飼う大家族の大黒柱。

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