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セール・アンド・リースバックは検討するべき?メリット・注意点・会計処理を解説

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公開日
2023.09.29
更新日
2024.02.20
セール・アンド・リースバックは検討するべき?メリット・注意点・会計処理を解説

資金調達を図るため、セール・アンド・リースバックを検討している経営者の方もいるでしょう。

「本当にセール・アンド・リースバックが最適かどうか」を判断するには、この取引について理解を深める必要があり、利用する際には会計処理の流れを把握しておくことが大切です。

そこで今回は、セール・アンド・リースバックに焦点を当て、その概要や利用シーン、メリット、注意点、会計処理の流れについてご紹介します。ぜひ参考にしてみてください。

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セール・アンド・リースバック取引とは

セール・アンド・リースバックとは、所有する不動産を金融機関などに売却した後、リース料(家賃)を払ってその不動産を使用し続ける取引のことです。

個人・法人を問わず行えます。

なお、不動産だけでなく機械設備や車両などもセール・アンド・リースバックの対象になりますが、今回は不動産のセール・アンド・リースバックについてご紹介いたします。

セール・アンド・リースバックの最大の特徴は、資金調達と経費削減が同時に行える点です。

一般的な不動産売却には移転が伴いますが、セール・アンド・リースバックの場合はそれが不要です。

また、セール・アンド・リースバックではリース料は発生しますが、不動産の所有者ではなくなるため、維持・管理費や修繕費、税金の支払いはなくなります。

このように資金を得ながら出費を抑えられるため、セール・アンド・リースバックはキャッシュフローの改善に効果的といえます。

借入との違い

資金調達という側面では、セール・アンド・リースバックと並び「借入」も有効な方法です。

しかし、これら2つには本質的な違いがあります。

セール・アンド・リースバック借入
資金調達の方法不動産の売却融資
資金調達の難易度不動産の価値次第では
困難なこともある
信用情報や返済能力に
問題がなければ基本的に可能
調達した資金の用途自由場合によっては制限がある
返済義務の有無なしあり

それぞれの特徴を把握した上で、自社にはどちらが適しているか検討するようにしましょう。

不動産担保ローンとの違い

不動産を活用した資金調達という側面では、セール・アンド・リースバックと並び「不動産担保ローン」も有効な方法です。

しかし、この2つにも本質的な違いがあります。

セール・アンド・リースバック不動産担保ローン
仕組み売却した不動産を賃貸利用する不動産を担保にして融資を受ける
不動産の所有権なしあり
返済義務の有無なしあり

両者の違いを理解しておけば、自社に適切なほうを選択しやすくなるでしょう。

企業がセール・アンド・リースバックを選択するのはどんなとき?

では、セール・アンド・リースバックはどのようなときに利用すると良いのでしょうか。

早期に資金調達を行いたいとき

セール・アンド・リースバックは、「手元にまとまった資金がなく借入金の弁済ができない」など、早急に資金が必要な状況で役立ちます。

この場合、不動産をはじめとする資産を保有しているのであれば、それを売却することで資金調達が叶うため、すぐに弁済に対応できます。

資金繰りが悪化しているが、移転はできないとき

「資金調達のためオフィスを売却しようにも、自宅としても利用しているため移転が難しい」というケースもあるでしょう。

このようなときにセール・アンド・リースバックを利用すれば、不動産を売却したのちリース料を払って利用し続けられるため、移転の必要がなくなります。

また、資金調達も叶うため資金繰りの悪化も改善できるでしょう。

他の融資の利用が難しいとき

融資制度にはさまざまな種類があり、中には一部の業種に限り利用ができない制度もあります。

例えば、金融業やパチンコ・射的場をはじめとする娯楽業の一部は、日本政策金融公庫が実施する融資を受けることができません。

このほか、狩猟業や観相業は信用保証協会の保証の対象外です。また、利用可能な融資を選んでも、確実に審査に通るとは限りません。

そのため、もし他の融資の利用が困難な状況であれば、セール・アンド・リースバックを利用するのも一案です。

企業価値を高めたいとき

セール・アンド・リースバックは、企業価値を高めたいときに利用するのもおすすめです。

セール・アンド・リースバックを利用すると、投下資本利益率(事業活動のために投じた資金から、どれだけ利益を生み出したかを示す指標)が改善します。

なぜなら投下資本利益率は、直接的には利益を生み出さないもの、つまり不動産へ投資すると悪化するからです。

セール・アンド・リースバックでは、不動産を売却し所有権を手放します。これにより投下資本利益率が改善され生産性が向上するため、企業の評価が高まります。

セール・アンド・リースバックのメリット

MERITと書かれた木のブロック

セール・アンド・リースバックを利用することには、以下のメリットがあります。

資金を早期に調達できる

セール・アンド・リースバックの利用に必要な手続きや審査には、さほど時間がかかりません。

そのため、最短数週間でまとまった資金を調達できます。

資産をそのまま使い続けられる

セール・アンド・リースバックでは不動産を売却しますが、リース料を支払えばそのまま使い続けることができます。

売却後の移転が不要なため、移転にかかる費用や時間を削減することが可能です。

資金の使い道には制限がない

セール・アンド・リースバックの利用で得た資金の使い道に制限は設けられていません。

得た資金を自由に使うことができるため、新規事業の開拓や設備投資など、さまざまな用途で活用できます。

税金や維持費において有利になる

不動産を保有している場合、税金や維持費、管理費など、さまざまな費用がかかります。

セール・アンド・リースバックを利用すれば不動産の所有権は売却先の会社に移るため、前述したコストが削減され、出費を抑えることができます。

資産のオフバランス化になる

セール・アンド・リースバックで売却した不動産は、貸借対照表上に計上されなくなります。

これにより貸借対照表をスリム化できる他、ROAの改善も期待できます。

後から買い戻しもできる

オーナーの合意を得られれば、セール・アンド・リースバックで売却した不動産を後から買い戻すことができます。

所有権を取り戻せば、リフォームやリノベーション、建て替えを行うことも可能です。

貸手側のメリット

貸手側は、セール・アンド・リースバックの利用者から相場以下の価格で不動産を購入できます。

また、家賃収入が毎月入るため、再購入されるまでは安定的に収益を得られるでしょう。

セール・アンド・リースバックの注意点

セール・アンド・リースバックを利用することには注意点もあります。

通常の売却より低額になる可能性がある

セール・アンド・リースバックで不動産を売却した場合、その売却額は相場よりも低くなることがあります。

その結果、抵当権を抹消できない場合はセール・アンド・リースバックを利用できません。

通常の売却のほうがより多くの資金を得られる可能性があるため、その点はあらかじめ理解しておきましょう。

改修などには所有者の同意が必要となる

セール・アンド・リースバックで売却した不動産の所有権は売却先の会社に移ります。

そのため、不動産を勝手に改修することはできず、希望する場合は新しい所有者の同意が必要です。

リース料の支払が発生する

セール・アンド・リースバックで売却した不動産を利用し続ける場合は、リース料を支払わなければなりません。

場合によってはこれが負担となり、財務状況が圧迫される恐れもあるため、資金管理はしっかり行いましょう。

セール・アンド・リースバック会計処理の流れ

ペンを持った人と電卓

セール・アンド・リースバックの会計処理は、主に「ファイナンス・リース取引」「オペレーティング・リース取引」の2つに分けて行います。

ファイナンス・リース取引の場合

ファイナンス・リース取引とは、リース物件の使用により生じる費用(購入費用や利息)をリース期間中に全額支払うことが約束された取引のことです。

また、原則としてリース期間中の契約解除は認められず、どうしても中途解約したい場合は違約金を支払う必要がある点も、ファイナンス・リース取引の特徴です。

そんなファイナンス・リース取引の会計処理は、一般的に以下のように行います。

例:

7,000万円で購入した鉄筋コンクリート造の建物をセール・アンド・リースバックで売却し、3,000万円の資金を調達。減価償却累計額は3,000万円で、5年リースの賃料が30万円の場合。

物件の売却

借方貸方
預金30,000,000円
減価償却累計額30,000,000円建物70,000,000円
長期前払費用10,000,000円

売却損の全額を長期前払費用(売却益は長期前受収益)として計上する点が、一般的な資産売却の会計処理と異なります。

物件のリース

借方貸方
リース資産30,000,000円リース債務30,000,000円
リース債務300,000円預金300,000円

リース開始時にはリース資産とリース債務の会計処理を行い、リース支払時にはリース債務を取り崩します。

オペレーティング・リース取引の場合

オペレーティング・リース取引とは、セール・アンド・リースバックにおいてファイナンス・リース取引に該当しない取引のことです。会計処理は、一般的に以下のように行います。

例:

7,000万円で購入した鉄筋コンクリート造の建物をセール・アンド・リースバックで売却し、3,000万円の資金を調達。減価償却累計額は3,000万円で、5年リースの賃料が30万円の場合。

物件の売却

借方貸方
預金30,000,000円
減価償却累計額30,000,000円建物70,000,000円
固定資産売却損10,000,000円

オペレーティング・リース取引の売却時の会計処理は、一般的な資産売却と同じです。

物件のリース

借方貸方
リース料300,000円預金300,000円

オペレーティング・リース取引では、リース料を支払うたびに費用計上しましょう。

まとめ

セール・アンド・リースバックの強みは、資金調達と経費削減を同時に行えるところです。

そのため、早期に資金調達を行いたいときや他の融資の利用が難しいときは、利用を検討してみましょう。

セール・アンド・リースバックを利用する際は、あらかじめ会計処理の方法も知っておくと安心です。

正しく計上して、自社の財務を最適化していきましょう。

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セール・アンド・リースバックは検討するべき?メリット・注意点・会計処理を解説

【監修】日本中小企業金融サポート機構 編集局長

保有資格:FP2級

大学卒業後、地方銀行に勤務。主に企業向け融資を担当。その後、損害保険会社にて法人営業、外資系金融機関にて法人融資や人材育成を担当するなど、一貫して金融関連業務に従事。2019年一般社団法人日本中小企業金融サポート機構に入社し、これまでの金融の知識と法人営業の経験を活かし、多くの中小企業・零細企業をサポート。
プライベートでは3児の父の顔も持ち、犬・猫・亀も飼う大家族の大黒柱。

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