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中小企業が利用する特定調停スキームとは



日本経済は多くの中小企業で支えられているにも関わらず、中小企業への金融支援はいつの日も課題を抱えています。特に経営不振の中小企業をどう評価し資金提供ができるかについては民間の判断では難しく、国で制度を設けています。今回はその中でも中小企業の債務整理に関わる新しい再生スキームとしてできた特定調停スキームについて説明します。

 

特定調停スキームとは

特定調停制度は個人の債務整理の方法として認知されていた制度で、この制度の企業版が特定調停スキームです。特定調停制度では、裁判所に対して制度利用の申し立てを行い、裁判所の力を借りて、融資をしている債権者との妥協案を探ることになります。イメージがしやすい状況では借金が膨れすぎて現状では返済しきれない、という場合に債権者と折り合いをつけるために利用されます。中小企業が直接債権者と交渉するよりも裁判所を介すことによって調整が円滑になることが狙いです。もちろん妥協案に調整するため借金が免除されるわけではなく、利息の負担を軽減させることなどが現実的です。その制度の背景や対象企業について後述します。

 

特定調停スキームが出来た背景

2008年に発生したリーマン・ショックは、日本企業にも大きな影響を及ぼしました。この金融危機に際し、日本政府は中小企業を守るために、金融円滑化法を制定することになりました。金融円滑化法は不況のあおりを受けやすい中小企業を対象にした法律で、営業資金を融資している金融機関は、中小企業に対してリスケ(返済日の延長)や利息軽減など返済条件の変更を促進させる効果のある法律でした。しかしながらこの法律も暫時的なもので、徐々に安定してきた情勢の中、平成25331日に終了しました。これまでは金融円滑化法があったため、法律に則ってリスケジュールを行うことができましたが、法律の期限満了とともに、中小企業の債務整理についてのハードルが上がってしまいました。そこで日本弁護士連合会が中心になって提案されたのが、先に説明した特定調停スキームです。主に個人の債務に対して活用されていた特定調停制度を、企業が活用することで、金融円滑化法と同じように債務整理を行うことが可能となりました。

 

 特定調停スキームの対象

特定調停スキームは、どの企業も無制限に利用できるわけではありません。明確な規定ができているわけではありませんが、概ね年商が20億円以下、負債総額が10億円以下の中小企業が対象とされています。同じく中小企業でも、年商が20億円を超えていたり、負債総額が10億円を超えている場合には、民事再生手続や会社構成手続など別の方法で再建を試みるのが一般的です。この他にも地域経済活性化支援機構や中小企業再生支援協議会といった機関へと相談するという方法もありますので、特定調停スキームと合わせて活用を考えておくと良いでしょう。

 

特定調停スキームのメリット

特定調停スキームには様々なメリットがあります。代表的なメリットを挙げるならば、債権者との同意が得られやすい、債務整理にかかる時間が短く済む、といった利点が挙げられるでしょう。

 

特定調停スキームは、裁判所に申し立てを行い、裁判所や裁判官、調停委員会が、債務者(中小企業)と債権者(金融機関)の仲裁の下、返済計画や債務金額の調整が協議されることになります。債権者と債務者だけで協議を行ったとしても、債権者は返済計画の変更を認めたくない、債務者は負担を軽減させたいという利害の不一致から、債務整理のために時間がかかってしまったり、そもそも債権者側の同意が得られなかったりといった状態に陥ることが多いですが、特定調停スキームでは裁判所など専門家の仲裁が入ることによって、同意が得られやすくなるという利点が出てくることになります。ちなみに、特定調停スキームによって債務整理にかかる時間としては、早い場合3カ月から4カ月程度の時間で済むことになります。債権者企業にとっても交渉の負担が軽減されると考えれば助かるでしょう。加えて経営改善支援センターからの弁護士費用の補助を受けられる可能性があることも魅力の1つでしょう。

 

この他にも、特定調停スキームは私的整理になりますので、法的整理の再生手続の場合と比較して、信用を失いにくいというメリットがあります。法的整理の場合には他企業にも債務状態を知られてしまい、取引先からの信用を失い、取引を拒否されてしまうこともありますが、特定調停スキームならばそういった心配が無いため、大変なメリットになると言えます。

 

 

特定調停スキームは多くのメリットがあり、特に中小企業の信用という問題も回避できるため、優れた債務整理方法と言えるでしょう。中小企業の資金繰りにはまだまだ課題が残り、最適な制度はこれからも策定が進む状況であるでしょう。もし直近で効率的な経営再建を検討しているようであれば、特定調停スキームという手段を候補入れておきましょう。

一般社団法人 日本中小企業金融サポート機構