コラム
ファクタリングは未回収の売掛金をファクタリング会社に売却し、早期資金化できるサービスです。
古くから、ファクタリングは世界各国の商取引で重要な役割を果たしてきました。
ファクタリングの起源は古代メソポタミアです。
以後はイギリスの交易商やアメリカの繊維会社が中心となり、現代の形に発展しました。
ファクタリングが現代の形に発展するまでの変遷を、これから歴史とともに振り返りましょう。
この記事では、以下3点について説明します。
ファクタリングの歴史について知りたい方は、ぜひ最後までお読みください。
現代の商取引に欠かせないファクタリングは、どのようにして生まれ、発展してきたのでしょうか。
ファクタリングの歴史を振り返ってみましょう。
ファクタリングの起源は、紀元前3100年ごろの古代メソポタミアです。
ファクタリングの基本的なルールは、バビロニアの統治者であるハンムラビ王が制定した「ハンムラビ法典」に記載されているといわれています。
古代メソポタミアでは、穀物や銀を通貨としてファクタリングとよく似た賃借契約が行われていました。
後年のローマ時代になると、債権回収の専門家が初めて現れます。
ローマ人は自らの帝国を拡大する過程で、ヨーロッパ中にファクタリングの仕組みを広めました。
実は、「ファクタリング(Factoring)」という言葉は、ローマ人が使ったラテン語の「ファセレ(Facere)」に由来しています。
現代のファクタリングの原型が生まれたのは、1300年代のイギリスだといわれています。
ファクタリングは交易商人や衣料品商人の資金調達方法として、広く利用されていました。
実際に、当時のイギリスには売掛金を買い取り、現金の前貸しの形で資金を提供する「ファクター」と呼ばれる組織が存在しました。
ファクタリングがほぼ現代と同じ形で本格的に運用されるようになったのは、1900年代のアメリカです。
当時のアメリカでは、主に衣料品や繊維会社が原材料費を捻出するため、未払いの請求書を資金化する「請求書ファクタリング」が利用されていました。
ファクタリングの需要が高まるにつれて、ファクタリングの仕組みは他の業界にも広まり、ついにアメリカの銀行がファクタリングサービスの提供を開始しました。
2000年代に入ると、インターネットの発展にともない、ファクタリング市場もグローバルに拡大します。
手軽な電子決済も利用できるようになり、ファクタリングは借入や銀行融資に代わる新たな資金調達方法になりました。
海外では日本よりもファクタリングの利用が盛んで、日本のおよそ5~6倍の市場規模があります。
ここまで、ファクタリングの起源や歴史の流れについて触れてきました。
ここでは、日本の商取引において、ファクタリングがどのように発展してきたのかを解説します。
実は、日本にファクタリングが伝わったのは、1970年代に入ってからのことです。
アメリカの企業を通じて、日本にもファクタリングが広まりました。
1900年代からファクタリングの仕組みを発展させてきたアメリカと違い、なぜ日本はファクタリングの導入が遅れたのでしょうか。
その理由は、これまで主流だった「手形取引」が影響しています。
1970年代の日本では、現金の代わりに「手形」を発行する手形取引が主流でした。
そのため、ファクタリングが知られるようになってからも手形取引が一般的で、なかなか日本企業にファクタリングが浸透しませんでした。
しかし、1991年のバブル崩壊により、手形取引が衰退するとファクタリングが注目を集めます。
手形取引の衰退の理由は、
「事務手続きが煩雑で、コストがかかること」
「数ヶ月後でないと活用できず、債権の流動性が低いこと」の2点です。
手形取引と比べて手続きが簡単で、売掛金をいつでも資金化できるファクタリングが、手形取引に代わって浸透しました。
近年、日本では政府主導で、売掛金を含む債権の流動化に取り組んでいます。
2005年には、「債権譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関する法律の一部を改正する法律」が制定されました。
債権の譲渡をめぐる手続きが明確化され、二重譲渡などのトラブルを防止できるようになりました。
こうした法整備の後押しを受け、一般の企業にとってもファクタリングがより利用しやすくなりました。
現在はファクタリングの種類が増え、売掛金のほかにも医療報酬、介護報酬、商品在庫、家賃収入など、さまざまな保有債券を資金化できるようになりました。
ファクタリングは多くの業種において、今やなくてはならない資金調達方法です。
法整備の進展や、インターネットの普及により、ファクタリングの利便性が増した結果、ファクタリングの需要は今後も高まる見込みです。
民間のファクタリング会社が参入した結果、少額の売掛金からでも利用できるようになったため、中小企業や個人事業主を中心に、ファクタリングの取扱高が増え続けています。
ファクタリングの今後の展望を見ていきましょう。
インターネットの普及や、電子決済の発展によって、申込みから入金までがすべてオンラインで完結する「完全非対面型」のファクタリングサービスが誕生しました。
全国どこに住んでいても利用できるため、お住いの地域や事業所の所在地にファクタリング会社がない場合でも安心です。
時代のニーズの変化に対応し、ますます便利に利用できるファクタリングサービスが次々と登場しています。
一方で、さまざまな民間企業がファクタリングに参入した結果、悪徳業者が増えている点にも注意が必要です。
ファクタリング会社を装い、法外な手数料を要求してくる悪徳業者が存在します。
ファクタリングの利用にあたっては、ファクタリング会社と取り交わす契約書、覚書、申込書の内容をよく確認し、内容に不明な点がないかチェックしましょう。
とくに注意が必要なのが、利用者の給与を先払いする「給与ファクタリング」です。
給与ファクタリングは違法です。
個人の給与はファクタリング会社が取り扱える「金銭債権」ではなく、ファクタリングの対象ではない「労働債権」です。
また、給与は労働基準法で保護されており、使用者が労働者に対し、直接・全額支払う義務があります。
もし、給与ファクタリングを謳うサービスがあっても、絶対に利用しないように注意しましょう。
今後もファクタリングの需要は拡大する見込みです。
ファクタリングは未回収の売掛金を早期資金化し、資金繰りを改善できるサービスです。
また、ファクタリングでは利用者の信用力よりも、売掛先の信用力が問われるため、審査が柔軟で気軽に利用できるというメリットがあります。
ファクタリングには、「2社間ファクタリング」「3社間ファクタリング」の2種類の契約方法がありますが、売掛先の承諾を得る必要がない2社間ファクタリングを利用する企業が大半です。
ファクタリングはさまざまなメリットがあるサービスですが、手数料の存在や、債権譲渡登記が必要な場合があるなど、デメリットもいくつか存在します。
ファクタリングを利用する前にサービス内容を慎重に確認することが大切です。
この記事では、以下の3点についてご紹介しました。
ファクタリングは紀元前の古代メソポタミアから現代に至るまで、世界各国の商取引において重要な役割を果たし続けてきました。
現在は、法整備の推進やインターネットの普及により、ファクタリングはさらに便利・手軽に利用できるサービスに成長しています。
今後も、ファクタリングは時代のニーズの変化に対応し、さらに多くの企業が利用するサービスとして広く普及していくことが予想されます。