コラム
債務者区分という言葉をご存知でしょうか。
知らない方もいると思いますが、銀行から融資を受ける機会がある方はぜひ知っておきたい言葉です。
ここでは、債務者区分の意味や、把握の仕方、評価の方法などについて紹介します。
目次
債務者区分とは、金融検査マニュアルに則って定められる区分のことです。
金融機関の持つ財政状態に応じ、下記の6つに区分されます。
財務内容に問題ない債権者のことです。
業績良好なので、融資の際の信頼度も高くなります。
金利減免や棚上げをしているといった、貸出の条件に何らかの問題を抱えている債務者のことです。
返済に延滞がある、業績が芳しくない、財務内容に問題があるなど、何らかの不安要素を抱えています。
要注意先の中でも、融資の一部に3ヶ月以上の延滞があった場合、または貸出条件緩和債権がある場合には、この要管理先の扱いとなります。
経営難の状態に陥っており、今後経営破綻となる可能性が十分に考えられる債権者を指します。
経営状況が、破綻懸念先よりさらに深刻な債権者のことです。
法的に経営破綻の事実はないものの、ほぼ立て直しが困難な状態を指します。
既に破産などの手続きをし、取引停止処分となった債権者のことです。
債務者区分の存在がわかったとしても、自分の事業がどこに区分されているのかは知らない方も多いでしょう。
基本的には、銀行の融資担当者に聞けば把握できます。
以前は、債務者区分を経営者へ伝えることを懸念していた銀行も少なくありませんでした。
これは、たとえば破綻先であった場合などに理由を説く必要が出てきてしまい、クレームの対象にもなりかねなかったためです。
しかし現在では、事業を存続させるために必要な材料として教えるべきだという風潮も広まりつつあります。
銀行で債務者区分を聞くときには、「不安だから聞きたい」「教えてください」と理由もなく聞くのではなく、「今後の経営改善のために知りたい」といった切り出し方で尋ねましょう。
適切な理由を述べた上で尋ねれば、教えてくれる銀行がほとんどです。
ちなみに債務者区分は、信用格付に基づいて区分されています。
この信用格付とは、格付機関が、その会社の長期的な債務の支払い能力を評価し、順位を付けたものを指し、D~AAAの間で区分されます。AAA・AA・A・BBBまでが投資適格と格付けされ、それ以降のBB~Dまでは投機的格付けとなります。
この信用格付と債務者区分が連動しており、銀行毎にどこからが「正常先」、どこまでが「破綻先」のように定めているのです。
この信用格付の区分は、事業における財務状況、経営者の能力、販売力などによって定められています。
債務者区分が低い段階だと融資にも大きく影響してくるものです。
そのため、事業主からすれば、なんとかその区分を引き上げる方法はないかと考えるでしょう。
実際に経営破たん状態にあるような事業だと評価の引き上げは難しいかもしれません。
しかし、一時的に赤字となっているなど、時期によって経営状況が変わるのであれば、その旨を明確に伝えることで区分を引き上げることも可能です。
銀行で説明をする際には、資料を持っていき、現在の赤字が一過性であることを伝えましょう。
さらに、黒字への転換のために現在取り組んでいる具体的な対策方法、返済財源を確保する方法などを明確に伝えることが大切です。
大企業であれば、経営に関連する資料を作成し、将来的な戦略をもとに事業計画を立てているようなところも多いでしょう。
もちろん、長期的に経営が続いている企業は、それだけでも信頼性が高くなります。
しかし、少人数で経営を行っている中小企業の場合には、財務体制だけで判断するのがなかなか難しいものです。
そのため、少しでも評価を高めるために、経営改善計画を提出し、将来性や実現可能性を認めてもらうことが大事です。
特に中小企業や零細企業の場合、景気の影響も大きく反映されやすく、一時的に経営悪化に陥ることも少なくありません。
もちろん、一時的な要因で債務超過になることもあるでしょう。
そのため、現状の収益状況だけを提示してしまうと、評価が下がってしまう可能性が高いです。
そうならないためにも、先述したように、現状の赤字が一時的である旨や、長期的な計画を明確に伝えるようにしましょう。
ここで紹介したように、金融機関からスムーズに融資を受けるためにも、事業主の方は債務者区分の存在を知っておきたいところです。
特に中小企業の場合には、その時々で大きく経営状況が変化するため、自分たちがどの区分に該当するのか不明瞭なケースも多いでしょう。
いざ確認してみたら破綻懸念先や実質破綻先などに該当していて、融資が困難だったということにもなりかねません。
そうならないためにも、常に自分たちがどういった状況に置かれているのかを把握しておきましょう。