コラム

【実例も解説】貸し渋り・貸しはがしはなぜ起こる? 原因や対策

融資を受け、それなりに長い付き合いをしている銀行でも、ときに融資先の企業に対して「貸し渋り」や「貸しはがし」と呼ばれる行動を起こすことがあります。


この金融機関による貸し渋り・貸しはがしはなぜ起きるのか、原因や対策について解説します。


貸し渋りや貸しはがしの実例についても紹介するので、銀行の担当者とのやり取りを思い浮かべていただければ、もしかすると貸し渋り・貸しはがしを受けているかもしれないことに気付けるかもしれません。


ここでは下記4つについて徹底解説をしていきます。

  • 貸し渋りとは何か
  • 貸し渋りが起こる原因と対策・実例
  • 貸しはがしとは何か
  • 貸しはがしが起こる原因と対策・実例


ぜひ、最後までご覧ください。

貸し渋りとは

貸し渋りとは、企業が銀行に融資を申し込んだ際、その企業にとくに借り手としての問題がないにもかかわらず、銀行側が新規の融資または追加の融資に消極的になることを指します。


貸し渋りの方法としては、銀行が金利・返済期間・担保などの融資条件を厳しくして、企業が借りにくい状況を作るようなケースが一般的です。


実質的に、融資を断っているのと同等と考えてよいでしょう。


貸し渋りは、経営が安定している企業や資本力がなく銀行からの融資に頼らざるを得ない中小企業に対しても、行われる可能性があります。


これまで同じ銀行から複数回の融資を受け、長年の付き合いがあり、延滞などを一度もしたことのない企業であっても同様です。


具体的には希望する融資額に対して減額させられる、追加担保を求められる、金利の引き上げを要求される、あるいは「稟議の結果、融資できないことになりました」と告げられるといったことが起こり得ます。


このような貸し渋りは、公平で健全な経済活動を妨げる要因になるとして問題視されることもあります。


しかし実際のところ、融資の可否は銀行が自由に決めるものであり、貸し渋りは法的には何ら問題のない行為とされています。

貸し渋りが起こる原因と対策・実例

銀行はなぜ貸し渋りをするのか、企業はそれに対してどのような対策ができるのか、具体的にどのような形で貸し渋りが行われるのかを説明します。

貸し渋りが起こる原因

一般的に貸し渋りは、不景気のときに顕著になるといわれます。


景気が減速してくると、銀行は不良債権のリスクを回避するために、自己資本比率を高く保持しようとします。


自己資本比率とは、総資本に対する自己資本の割合のことです。


すべての企業にとって、自己資本比率は高く維持するのが理想的ではあります。


その中でもとくに銀行は、自己資本比率に関してBIS(国際決済銀行)によって規制を設けられているため、自己資本比率の数値には敏感です。


国内業務のみを行う銀行でも自己資本比率の下限は4%以上、国際的な業務を営む銀行の場合、自己資本比率の下限は8%以上を維持することと決められています。


この数値をキープすることができなければ、銀行は銀行としての業務を行うことができません。


バブル崩壊やリーマンショックに見られるような大規模な景気減速が起こると、企業経営が悪化し、倒産する会社が増加します。


銀行の立場からすれば、このことによって不良債権が増えるのは、自己資本比率に悪影響を及ぼすので困るわけです。


銀行のスタンスは単純にいえば、「返済されるかどうか分からない融資はしない」です。


これが、貸し渋りが起こる原因です。

貸し渋りへの対策

企業側ができる貸し渋りへの最良の対策は、業績を上げることです。


しかし、融資が必要なときは往々にして業績が停滞しているときなので、これはなかなか難しい注文です。


そこで、業績回復に向けた具体的なビジョンを示す事業計画書を用意することが、現実的な対策となるでしょう。


銀行との融資交渉では口頭での熱弁よりも、データに裏付けられた書類の方が説得力を持ちます。


不景気で銀行の貸し渋りが目立つときには、国もまた対策を講じることがあります。


2008年のリーマンショック時は、業況の悪化している業種に属する中小企業を対象にしたセーフティネット保証(5号)を、大幅に拡充しました。


主に中小企業が、信用保証協会付きの融資を受けやすくなるような制度が設けられました。

貸し渋りの実例

銀行としてもすでに付き合いのある企業は、今後とも付き合いを継続したいはずです。


そのため貸し渋りを行うにしても、「新たに融資を行うのはちょっと…」というような形で直接的に拒否するようなことは、あまりありません。


うまく条件を付けて、融資を行わない方向に誘導する形が一般的です。


たとえば「信用保証協会付のコロナ特別制度融資を受けていただいたわけですから、資金がダブついても困ると思いますので、今期のプロパー融資は控えておいた方がいいでしょう」といったような具合です。


一見すると妥当な内容に聞こえるかもしれませんが、融資を受ける必要があると感じたら、再度融資を希望する旨を伝えて、初志貫徹しましょう。

貸しはがし(貸し剥がし)とは

貸しはがしとは、銀行がすでに企業に融資している資金を積極的に回収することを指します。


つまり企業にとっては、借りているお金を一括で返済してくれと迫られるということです。


こちらもこれまでの取引内容にとくに問題などなく、期日どおりの返済を続けているような場合でも起こる可能性があります。


銀行にとって貸し渋りはこれ以上融資を増やさないことを意味しますが、貸しはがしは融資を減らすことを意味します。


ただし、貸しはがしには強制力はありません。


そのため企業側がこれを断ったとしても、法的には問題ありません。


借り手である企業には、「返済期限がくるまで債務者は返済しなくても良いという利益」を意味する「期限の利益」があります(期限の利益の詳細について、後述します)。


貸しはがしに怯えないようにするためにも、このことをまず覚えておきましょう。

貸しはがしが起こる原因と対策・実例

銀行はなぜ貸しはがしをするのか、企業はそれに対してどのような対策ができるのか、具体的にどのような形で貸しはがしが行われるのかを説明します。

貸しはがしが起こる原因

貸しはがしも、景気減速や低迷期に多くなる傾向があります。


銀行は自己資本率を上げるために、貸しはがしを行います。


しかし、それよりももっと切迫した状況のときもあります。


たとえば、融資を受けている企業の親会社や大口取引先の経営が傾いたときなどは、その企業の経営も危ないと判断します。


そのため保全のために、貸しはがしを行うわけです。


要は銀行が企業に貸し出した融資(債権)が不良債権化する可能性が高いと判断したときに、貸しはがしが起こるということです。

貸しはがしへの対策

しかし、前述したように企業は貸しはがしに応える義務はありません。


債務者は期限の利益によって守られているからです。


そのため貸しはがしについては、企業が銀行よりも優位な立場に立つことができます。


ただし、融資実行時に交わした金銭消費貸借契約書には「期限の利益の喪失」という項目があります。


そこにはたとえば、次のような項目に一つでも当てはまる場合、銀行は強制的に返済を求めることができる(貸しはがしをされても文句を言えない)ということが記されています。


  • 1回でも返済日に返済できなかったことがある
  • 契約内容や提出書類に虚偽があった
  • 破産手続開始、民事再生手続開始、保全処分、強制執行、滞納処分があった


貸しはがしへの対策は、申し出を受けても断固として応じない姿勢を貫くだけで十分ですが、「期限の利益の喪失」に当てはまる場合は別です。


一度、金銭消費貸借契約書を見返して、契約内容がどうなっているのかを確認してみることをおすすめします。

貸しはがしの実例

貸しはがしに関しても、貸し渋りの場合と同様に「今行っている融資を引き上げさせていただきます」と伝えてくるようなことは、ほぼありません。


たとえば「日本政策金融公庫さんからコロナ特別融資を受けたと思いますが、そちらの金額が大きいと思いますので、返済負担を軽くできるようにうちからの融資は早めに返済してしまいましょう」というような具合です。


こちらに関しても、一見して妥当なアドバイスにさえ思えます。


ただ、日本政策金融公庫と銀行双方への返済を並行して行うことが十分可能なのであれば、その旨を説明して今まで通りの返済を心がけるようにするとよいでしょう。


無料相談・お問い合わせ